One's 歌詞解釈
the GazettE 8th Album 『DOGMA』
#13 OMINOUS/ 凶夢
眠れ、数を数えて、、、もう一度
さぁ、過去を記憶の底に沈めて
次のステージに向かおう
思いはくだらない奴らに潰されてしまった
夢に向かい飛びたつ君に見えるだろうか
悪意に満ちる世界で
邪な企みと戦う君が見える
忘れないで
心は死なない
忘れないで
そう、君の思い描く夢は
かなわない夢
現実・・・恐怖・・
真実・・・畏怖・・
眠ろう、呼吸を整え 再び目覚める時まで
思いもよらぬ
次から次と重なる厄災が
俺を失望の底につき落とす
新しいことを始める度 奪い去られ壊される
全てを奪われた状況で どうすることもできない
悲しみに暮れる自分が気持ちを圧し殺して歌っても
誰かを救うことなんてできないんだ
眠りにつこう ゆっくり呼吸を整え 再び歩きはじめるために
歌詞リンク
補足説明および雑感など
■タイトル OMINOUS/凶夢
語義:OMINOUS(英語)
(形容詞)縁起の悪い, 険悪な, 前兆となる, 不気味な, 不吉な"
歌詞のキーワード「逆夢」と重ねて 不吉な夢→「凶夢」とする
■題材/モチーフ
大切なものを奪われ傷心の極みにある人が
過去を振り返り、
希望に満ちていたかつての自分に送るメッセージ
異空間的な世界を描けたらなと思い、最初から最後をイメージして作った曲です。歌詞はOMINOUSというイメージも含めた、すべての事柄に対するあとがき的なイメージです。RUKI
「GiGS 2015年10月号」
■主題/テーマ
「夢というのは潰されやすい。だけど夢をもつ心までは奪うことはできない」
夢を壊された今の自分は無力だ
今の自分にできるのは
明日に向かう英気を養うために眠ることだけだと嘆く
夢を描かなければ 夢を壊されることはない
しかし
夢を描かなければ 夢を実現することは決してできない
■背景/バックボーン
アルバム制作年の2014~2015年辺りは作詞者にとって多難で四面楚歌な年でした。
音楽業界の変化にともない厳しい制作環境で追い詰められること(※1)に加え、RUKI(作詞者)が新規に手がけたアパレルブランド(VITAL MATERIAL)が乗っ取られる(※2)という痛手が重なった時期でもありました。
※1にまつわる楽曲
#12 DEUX:厳しい音楽制作の環境
https://ameblo.jp/utu-bo/entry-12138396524.html
#03 RAGE:レーベルとバンドとの葛藤
https://ameblo.jp/utu-bo/entry-12222202644.html
※2にまつわる楽曲
LUCY:VITAL MATERIAL の乗っ取り
https://ameblo.jp/utu-bo/entry-12086870248.html
■ざっくり解釈
夢に向かう君(過去の自分)に伝えておこう
人生、
時に思いもかけないところで
不幸が降り掛かってくることもある
新しいことを始めようとすると
邪魔が入っては潰されることもある
夢に近づこうとすればするほど
夢を奪われたり、壊されたりする世の中だ
大切なものを奪われ傷ついた自分は
いかに無力かということに気がつく
心の痛みを圧し殺して
誰かのために生きようとしても誰かを救うことなんてできない
悲しみにくれる時は心を休ませよう
そしてそこから次に進もう
誰かが夢の実現を阻んだとしても
夢を持とうとする心まで奪うことはできないのだから
▼歌詞の特徴
▼羽ばたいていく君の目に映す
「映す」という語感がもたらすもの=時空の幅
「映す」という表現を用いることで過去と現在を映像のようにつなぎ合わせる効果を生み出している。つまり、「夢に向かって羽ばたく過去の自分」がこの先に「傷つき自失した姿」になることを予言している。
"君(過去の自分)への予言=俺(現在の自分)→君(未来の自分)への預言
さらに、「夢に向かって羽ばたく過去の自分」と「再起する自分の未来の姿」を描き、過去から今までの出来事を俯瞰する視点を据えている。それにより過去から未来への導線を引き、詞の鑑賞者に次にくる未来を予感(予想)させる構図になっている。
すなわち羽ばたいていく君は過去であり未来でもある。
この歌が「救い」の歌にも「絶望」の歌にも捉えられるのはこの「映す」という言葉が過去と未来をリンクさせる点に由来するのではないだろうか。飛び立つ君がいるのが(過去)と見るとその後に来るのは「絶望」となり、(未来)と見れば「希望」となりとなるからであろう。
■特徴ある描法
自分自身を俯瞰で眺める映画のような描写法は同アルバムの「BIZARRE」の記事でも述べたのと同様映画好きの作詞者の特性なのかもしれない。
■雑感
『DOGMA』の中で最初に公開されたLyricMVで、好みの曲調なので一番最初に手を付けたのだが途中で歌詞だけでは判断できない部分があって頓挫した。
というのも初聴の印象では「君が見た悪い夢は逆夢で、現実は幸運が訪れるよ」という内容かと思った。
しかし実際言葉を拾っていくとどう解読しても「夢は逆夢」は「君が夢に描く未来は実現しないよ」というネガティブ思考の歌詞になってしまう。
「え?この解釈でいいのか」と躊躇して見送っていたが、インタビューによるとその解釈であっていた。
"――アルバムではセンセーショナルな曲が続いていますね。そして最後の曲「OMINOUS」の、「忘れないで 心は死なない 忘れないで その夢は逆夢」と言うこの4行に救いを感じたのですが、そんな思いをこめられた曲なのでしょうか?
RUKI:どっちかというと逆ですね。良い夢をみているけど、それは逆と言うことを伝えたかったんです。
捉え方は聴く人次第でどちらでも良いなとも思っているのですが、「OMINOUS」と言う意味は「不吉」という意味で、現実か非現実かを繰り返すような歌なので・・・。
◯music. Jpthe GazettE NEWアルバム『DOGMA』インタビュー
http://music-book.jp/music/Artistpage/15697
夢は逆夢
確かに社会は正しきこと、善きことより
悪しきこと邪なことのほうが実現しやすく、
壁にぶつかり、心が折れることのほうが多いのが現実
ポップな曲によくある
夢っていうのは諦めなければ叶うというのは
それこそ夢物語の応援歌。
まあ、その辺りは 現実主義の作詞者が描くところじゃないと←
悲しみに自分を殺し叫ぶ声は
何も救えない
そして夢というのは誰のためのものではなく
自分のための夢でなければ夢とは言えない
自分自身を犠牲にしたうえで
誰かを幸せにするということは欺瞞
自分を含むだれかの犠牲の上にたった幸せというのは
結局破綻するんだよ
忘れないで
心は死なない
どんなに汚れた世界でどんなに妨害されても
自分の心は自分だけのもの、
だれにも邪魔することはできない最後の砦なんだという
傷つきながらも孤高を貫こうとする精神性が尊い
制作年の2015年は 踏んだり蹴ったりの年で
メンタルダメージが極まった状態で 作られた楽曲になるわけ
だけど
あれから3年近く経った今 アビスLUCYの映像をみるにつけ
本当に 歌に深みがまして・・
苦難すら 養分に変えてしまう強さというものでしょうか
まさに「艱難辛苦は汝を珠にす」
禍をもたらした輩は 思惑ハズレで
地団駄踏んでいるんじゃないだろうかとさえ思える
■語彙その他
▼Sleep…Count me down…Again
「count down(数を逆に数える,秒読みをする)」
という表現はあるが 「count [人称代名詞(目的格)] down」という用例は一般的にないので、詩的表現のひとつとして解釈。
◯Count me downのイメージ
・ヒプノセラピー(催眠療法)←Lyric MVの振り子の映像から
・過呼吸や麻酔のカウントダウン
など眠りを誘うためのカウントダウンのイメージも浮かんできます。
※過呼吸:精神的不安や極度の緊張などによって引き起こされる状態
※麻酔:DOGMA制作時期の5月ごろにRUKIが 激しい咳による肋骨骨折をしているので病院のイメージ
※ちなみに日本においてヒプノセラピーは日本医師会は未承認の領域。催眠療法もどきのあぶなっかしいところもあるので注意です。
あと・・これもカウント
・眠れない夜に数える羊 ←かわいい
Sheepが1...Sheepが2...🙄🐑
— RUKI_THEG▲ZETTE (@RUKItheGazettE) 2016年11月28日
▼dread
(…を)ひどく怖がる、恐れる 畏怖 畏れ
▼逆夢(逆夢)(対義語「正夢」)
夢で見たのと反対のことが起こった時、その夢を指して言う語。また、夢とは逆のことが起こるといわれる夢。
grazie
GiGS (ギグス) 2015年 10月号/シンコーミュージック
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