One's 歌詞解釈
the GazettE 8th Album『DOGMA』
#6 BIZARRE / 畸型
繰り返し
あいつを殺した
何度も何度も頭んなかで
あいつを殺してみたんだ
人々の恐れおののく眼
ここは地獄の入り口
だれもが知ってる悪い奴
[彼女はイカれてる ]
抑えきれない巨大な妄想
形成しきれぬ未熟な人格
制御を知らない好奇心が 無抵抗な人間を殺した
上限知らずの猟奇的な欲望に
取り憑かれて境界線を越えた
残虐性を帯びたその眼は
あいつの歪んだ素質そのものだ
怯える体
ここは地獄の入り口
震える体
欲望にギラつく眼差しに
怯える体
ここは地獄の入り口
震える体
行き着く先は死
罪を限りを尽くしても
未成年という理由で庇護される
死刑判決がくだされたとしても
奪われた命は贖えない
制御できない巨大な妄想
形成しきらない幼稚な人格
剥き出しの好奇心が無抵抗な人間を殺した
少年法に守られ ほくそ笑む加害者たち
根本にあるのは ありきたりを繰り返す社会の闇
事件を短絡的に捉える世論(メディア)は
その本質まで掘り下げることはしない
怯える体
そこは地獄の入り口
震える体
欲望にギラつく目
怯える体
そこは地獄の入り口
震える体
行き着く先は死
凶悪事件を起こしても 未成年というだけで罪を免れる
子を殺された親の嘆きは「死」を以てしても癒えない
血の滴りに恍惚するその眼は死ぬまで変えられない
歌詞リンク
補足説明
■タイトル
BIZARRE 対訳 畸型
(語彙)
【BIZARRE】(英)ビザーレ
奇怪、異様な、信じられない、奇異、奇怪、醜怪。
「普通でない(strange, odd ,unusual)」よりも強く、「あり得ない、グロテスク、想像を越えた」奇形を表す
対訳「畸型」の辞書的な意味
1)動植物で,本来の形状と異なったもの。遺伝子の異常や発育の異常の結果生ずる。
2)普通と違って変わっている形。奇妙な形。
■題材・バックボーン
RUKI「少年犯罪について思うことを書きました」
『GiGS』 2015年10月号より)
○背景
アルバム『DOGMA』製作期の2015年2月に「川崎市中1男子生徒殺害事件」が起きている。またその前年の2014年に起きた「佐世保女子高生殺害事件」の直後RUKIは次のようなツイートを残している。この2つの事件を念頭に制作された歌詞と推察できる。
話は全然変わるが、ここ最近物騒というか信じられない程残虐な事件が続くな。模倣的犯罪も以前とは比べものにならないくらい増えてる。輪を描くように日本が祈ったあの日から何が変わって何が狂ったんだろう。何と比べてかは分からないが、平和という言葉に違和感を覚えてしまう。
— RUKI_THEGAZETTE (@RUKItheGazettE) 2014年7月28日
○時系列
▼2014年7月26日 佐世保女子高生殺害事件
長崎県佐世保市で発生した女子高校生による猟奇的殺人事件。
(発覚は7月27日未明)
ウィキペディア
▼2015年2月20日
川崎市中1男子生徒殺害事件
2015年(平成27年)2月20日に神奈川県川崎市川崎区港町の多摩川河川敷で13歳の中学1年生の少年Aが殺害され、遺体を遺棄された事件
ウィキペディア
▼2015年8月26日
『DOGMA』リリース(最終制作段階: 2015年前半)
■ざっくり解釈
殺人の欲望に取り憑かれた異常者が妄想にあきたらず殺人を犯す。
事件発覚と同時同時にその猟奇性に驚愕する世間、
事件をセンセーショナルに伝えるだけのマスメディア。
凶悪化する少年犯罪に少年法は適正なのだろうかという疑念。
■主題:少年犯罪と法
「少年法」「少年犯罪」「被害者の尊厳」「報道のあり方」などの要素を一つの楽曲に集約されている。
1)少年犯罪と少年法
自己肥大し凶悪な犯罪を犯した人間を「少年法」で守る必要があるのか
あるいは「少年法」によって更生させようとしても、更生しきれない性質の犯罪もあるのではないか。(反社会的人格障害など)などの疑念
2)被害者の尊厳
法が犯罪者を裁き、たとえ「死刑」の判決を下したとしても、奪われた命に対する痛みを贖うことはできない。被害者の尊厳を守ることが置き去りになっていることへの疑義。
3)少年犯罪と報道
メディアの少年犯罪の報道が興味本位で見る視聴者の受け皿として日々垂れ流されすことに終始している。報道の内容が問題の本質に届かず何の解決にもなっていないと思う視聴者は多いはずなのに状況が変わっていかないのはなぜなのか。
▼映画的な描法
映画のティーザーのようにシーンが切り替わる構成。
単一人物の視点ではなく、複数の人物の目線を追って描かれている点が特徴的。
1)事件前の殺人犯の心理状態(殺人シミュレーション)※
2)事件のインタビューを受ける一般人
3)殺人現場
4)テレビ報道
5)それらを視聴する人間が少年法について抱える疑念
※実際のライブのバックスクリーンでは頭の上半分の男が血走った目をギョロつかせる映像が使われている
▼雑感および補記
○作詞者の姿勢について
古い作品「14歳のナイフ」「体温」などでも少年犯罪を題材にしていて、以前より少年犯罪に強い関心を持っていることが伺える。「少年犯罪」を社会を映す鏡として意識、無意識に捉えてるのではないだろうか。
また作詞者はたびたびハリウッドの猟奇的な映画を好んでみることを明らかにしているが、猟奇映画の多くは精神異常者から見える世界を映し出すことで、現代社会の光が生み出した陰の部分をクローズアップするものが多い。
そこには錯乱した精神状態にある犯罪者からの視点を想像することで、社会が生み出した「異常」に隠れる「真実」を見つけ出し、犯罪の根底に潜む社会の瑕疵を見つけ出そうとする姿勢が見えてくる。
※偶然ではあるがDOGMAのリリース時同時期に「14歳のナイフ」に関わる本が出版されたことが社会で問題視された。(敢えて本のタイトルは書かない。)
○畸型の正体とは
犯罪報道が日々繰り返され奇異な事件が日常化している。我々の感覚が「異常」に対して麻痺してしまっている。今の社会の精神状態そのものがBIZARRE(畸型)になっているのではないのかという警句とも言えよう。
一見正常にみえるものが異常なものを生み出すということはその本体が「不具合=バグ」を内包していることを意味する。バグを見逃すことは社会がフリーズすることにつながる。よって社会のバグを見逃したり、ないもののように扱えば、いずれ社会が正常に機能できなくなることにつながる。バグ=畸型の原因を無視することは自らを滅ぼすことになることを警鐘している。
しかしながら、マスメディアへの客観的な視点も結局のところはブーメラン。
歌だってメディアと同じで、傍観する第三者の言葉だけで現実は動かすことはできない。
それでも、考えていることを発信しなければ考えていないのと同じになってしまうので言わないよりはマシなのである。より多くの声が集まれば、大きな流れを作ることができるからだ。
○補記:「少年犯罪の凶悪化」という報道について
少年犯罪の激増や凶悪化といった報道をよく耳にするが、実はそうではないらしい。
法務省が発表している「犯罪白書」によると少年による凶悪犯罪は1958年から1966年までがピークで現在少年犯罪の検挙率は減ってきているという。
マスメディアによるセンセーショナルかつ過剰な報道が少年犯罪が増えたり、凶悪化している印象を与えているという話が各所からでている。
■ライブドアニュース(2015年10月8日)
少年による凶悪犯罪は「減少している」 弁護士がメディアの影響を指摘
http://news.livedoor.com/article/detail/10682914/
■警察庁 Official Website
【平成28年警察白書 統計資料】
→「2-49 刑法犯少年、触法少年(刑法)の年齢別、罪種別検挙・補導人員(平成26、27年)」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h28/data.html
少年による凶悪犯罪は「減少している」 弁護士がメディアの影響を指摘
http://news.livedoor.com/article/detail/10682914/
■警察庁 Official Website
【平成28年警察白書 統計資料】
→「2-49 刑法犯少年、触法少年(刑法)の年齢別、罪種別検挙・補導人員(平成26、27年)」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h28/data.html
「報道を鵜呑みにしてはいけない」というのは もはや常識なのだろう。
なんだか めんどくさいというか・・・
歌の趣旨を否定するような結論になってしまって
どうしたものかと(笑)
天邪鬼に 深読みすれば 別な解釈もできそうだけど・・・
本人がインタビューで語りきってるとこもあるからなぁ
まあ、これ以上掘り下げても徒労なので ざっくりとしたところで終了
grazie